開発者Q&Aから考察するBPBのバランス調整

2026/9/11(金)にPlayWithFurciferのYoutubeチャンネルとSpelkollektivet(後述)のtwitchチャンネルにて、視聴者からの質問に答える同時ライブ配信が実施されました。

Youtube(PlayWithFurcifer:https://www.youtube.com/@PlayWithFurcifer)

Twitch(Spelkollektivet:https://www.twitch.tv/spelkollektivet)
※Spelkollektivetとは、スウェーデンにあるインディーゲーム開発者向けのコリビング(共同生活スペース)です。BPB開発者(Doro氏とMario氏)が最近入居したそうです。
※Twitchのライブ配信の保存期間を経過すると視聴不可になります。

当然ながら全編英語での会話ですが、内容が気になる方はYoutubeの字幕+自動翻訳の機能などを利用してご視聴ください。

本記事では配信内での質問と開発陣(主にMario氏)の回答をもとに、BPBにおけるバランス調整の手法について考察します。長くBPBをプレイしていると、「まだ調整しないの?」「上方修正(下方修正)しすぎでは?」など、バランス調整に疑問を持ったこともあるかと思います。ところが、今回の配信を見たところ、開発は意図的にそのような調整を行っていることがわかりました。

開発陣のバランス調整に対する手法が気になる方はぜひご覧ください。
(以下における元動画の時間表記についての言及は、すべてPlayWithFurciferのYoutube配信での回答の開始時間を示します)

なお、ランクの話を持ち出すため事前に明らかにしておきますが、筆者はマスターとグランドマスターを行き来する程度のプレイヤーです。

バランス調整の指標は”マスターにおけるクラス比率”

配信内で、視聴者より「バランス調整はどのように行っているのか」という質問がありました。これに対するMario氏の回答が下記です。

「私たちのバランス調整の目的は単純であり、すべてのクラスにおけるマスター到達の難易度を同程度にすることです。(中略)もし特定のクラスの割合が減少または極端に増加した場合、そのクラスの上方修正または下方修正が必要だと判断します。」
原文:”What we try to do is just one goal to keep all classes to be able to reach master rank as easily as all the other classes. […] And if a class drops down or is very far above the other ones, we know we have to buff or nerf the class.”(47:54 Mario氏 / 筆者訳・中略は筆者による補足)

バランス調整の目的がマスターのクラス比率の平準化だと明示されたのはこれが初めてだと思います。プレイ歴が長い方は認識があると思いますが、これまでのディスコードでの開発陣の発言や実際のバランス調整の傾向から、アイテム使用率がバランス調整の重要な指標ではないかと以前からささやかれていました。上記の回答の続きでその点も認めていたため、開発陣としてはマスターのクラス比率を監視しつつ、アイテム使用率を指標として調整すべきアイテムを決めているようです。ただ、開発の言うマスターのクラス比率が、具体的にどのように集計されたものなのかといった詳細は不明です(単なる合計なのか、一定期間中にプレイされたクラスの合計なのかなど)。
やや極端な例えになるかもしれませんが、プロ(グランドマスター以上)に合わせた調整をすると通常プレイヤー(ダイヤ以下)には弱すぎる(強すぎる)クラスになるため、プロと通常プレイヤーの中間に位置するセミプロ(マスター)のクラス比率を基準とした調整をしている、という感じでしょうか。

マスターのクラス比率をそろえるということは、マスターを維持しているプレイヤーとダイヤの上位プレイヤーをバランス調整の基準にしていると言えます。

この点を踏まえて考えると、直近のアップデートであるver1.1.8とver1.1.9でエンジニアに下方修正がなかったことの理由が推察できます。私見ですが、エンジニアは実装当初から全クラスの中でも特にパワーが高いクラスだと感じています。ただ、これは電荷や歯車といった特殊な仕組みを持つエンジニアを使いこなした場合の強さです。どのアイテムにどういう順番で電荷を通すか、歯車を意識した進行や歯車を使うタイミングなど、エンジニア特有の仕組みを使いこなせないと充分なパワーを発揮できません。エンジニアの本当のクラスパワーが非常に高かったとしても、ダイヤのプレイヤーがそれを理解しないとマスターのクラス比率は上昇しません。このため、このバランス調整の手法だと、エンジニアの下方修正がゆっくりと進んでいるのは自然な話だと言えます。

このようなバランス調整を行うと、上位プレイヤーほど「まだ調整しないの?」という疑問につながりやすいです。
グランドマスター以上のプレイヤーはクラス(構成)の特性を理解して使いこなすまでが早いです。これに対して、ダイヤでそのクラス(構成)の強さが広まるには時間差が発生します。このため、マスターにおけるクラス比率を基準として調整すると、より上位のランク帯ほど強いクラスが暴れる期間が長くなり、「まだ調整しないの?」という疑問につながるのだと考えられます。

アイテム使用率とアイテムの強弱について

また、Mario氏はアイテム使用率に注目したバランス調整について、興味深い発言をしていました。

「個々のアイテムに対する上方修正や下方修正についてはもっと複雑な話になります。というのも、あるアイテムが強力であること自体は問題ではなく、私達が目指しているのはあくまでもアイテムの多様性を確保することだからです。(中略)仮に私達が『実は強いアイテムだ』と認識していたとしても、誰も使っていないのであれば、それでも上方修正しなければなりません。反対に、『このアイテムはそこまで強くないのになぁ』と私達が思っていたとしても、アイテム使用率が高すぎるなら、それでも下方修正しなければならないのです。」
原文:”Buffing or nerfing individual items is a bit more difficult because an item being very strong is not a problem in itself, but our goal is to have a good variety of items. […] It’s more a question of if nobody uses the item and we secretly feel it’s strong ,we still got to buff it. And if it’s used too much and we think “ah, it probably it isn’t as strong as people think it is”, we still got to nerf it.”(49:08 Mario氏 / 筆者訳・中略は筆者による補足)

このMario氏の発言で目を引くのは、実際のアイテムの強弱は横に置いてアイテム使用率に従って調整していると明言した点です。開発陣としては、使ってもらえないアイテムには価値がないと考えているようで、特定のアイテムに片寄り過ぎずにすべてのアイテムが実際に利用される環境を目指しているようです。
このバランス調整手法は、まさに「上方修正(下方修正)しすぎでは?」と感じる原因でしょう。

どれだけ強くてもアイテム使用率が低ければ上方修正するという話の例としては、ホーリースピアの上方修正が挙げられます。実装当初は確かに弱い武器でしたが、しばらくしてから段階的にicon消費量が25から10まで減少、命中率が100%から200%まで上昇、スタミナ消費値が1から0.4まで減少、といった形でかなり強力な上方修正が入りました。その時点でアイテムとしてのパワーは充分に高かったはずですが、さらにクールダウンが2秒から1.8秒に短縮されるという上方修正が追加で入ったことがあります(ver1.0.9)。アイテム使用率は公開されていないため断言はできませんが、上位プレイヤーにとって違和感のある上方修正だったことは確かです。

このアイテム使用率に注目した調整も、上位プレイヤーほど疑問を感じやすい手法だと言えます。アイテム使用率についても集計方法や適正値などの詳細が不明なためはっきりとしたことは言えませんが、プレイヤーの比率からするとダイヤでの使用率が強い影響を与えていると考えられます。グランドマスター以上とダイヤではアイテム理解度がかけ離れており、本当は強いアイテムだとしてもダイヤでは使いこなせずアイテム使用率が上がらないという状況は充分に考えられます。このような状況で追加の調整が実施されると、上位プレイヤーが「上方修正(下方修正)しすぎでは?」と感じるのも無理はありません。


ひとつ補足ですが、開発陣はすべてのアイテム使用率の適正値を一律に設定しているのではなく、アイテム毎(またはグループ毎)に設定しているようです。この点は、下記のオートマナトンの調整に関する質問への回答からうかがえます。

「(オートマナトンは)強力ではあっても、メタ(環境の定番)にはならないようにしたいと考えています。レインボースライムと同じような立ち位置です。非常に強力ですが、クラフトが難しく戦略上の最適解にはなりにくいアイテムです。(中略)上振れた時の選択肢のひとつであり、まれに見かける程度でデザイン上は充分なのです。ですので、高ランク帯で極端に強くなるような設計にはしていません。」
原文:”We want this to be powerful but not to be the meta. It’s a bit like the rainbow gooberts, which is an extraordinarily powerful item that is so difficult to craft that it’s usually not a strategically optimal thing. […] That is like the high roll option, but seeing it very occasionally is enough design-wise. So, it’s not designed to be incredibly strong competitively.”(1:32:57 Mario氏 / 筆者訳・中略および括弧書きは筆者による補足)

この他にも、疲労構成やフリーズ構成について、メタにならない程度で環境に残るように調整しているという話がありました(ゲームが遅くなりすぎる、負けるとプレイヤーが不快に感じるといった理由によるそうです)。

アイテム使用率による調整は単純なものではないようです。

プレイヤーの理解度に合わせたバランス調整手法

一旦、ここまでの内容をまとめます。

・バランス調整はマスターにおけるクラス比率をそろえるために実施されている。
・調整を行うアイテムはアイテム使用率を指標にして決めており、実際のアイテムの強弱は問わない
・アイテム使用率の適正値は一律ではない。
・バランス調整ではダイヤの動向が強く反映されていると思われる。

このバランス調整手法は、ボリューム層であるダイヤのプレイヤーのゲーム理解度に合わせたやり方と言えます。反面、環境の最前線にいるグランドマスター以上のプレイヤーにとっては物足りないやり方であるとも言えるでしょう。

筆者にはこのバランス調整手法の良否を判断することはできませんが、少なくともプレイヤーの平均的な理解度の向上を見守るやり方であると感じます。BPBは理解が進むことで面白くなるゲームです。理解できるまで待ち、理解が追い付いた時点で変化を生じさせる、というのはプレイヤーの満足度の向上にもつながります。

マスターのクラス比率が崩れるのは、ダイヤのプレイヤーの理解度が向上して特定のクラスのパワーが充分に発揮されるようになった時でしょう。マスターのクラス比率の変動は、プレイヤーの平均的な理解度がクラスやアイテムの実情に追いついたことを示す兆候とも言えます。

アイテム使用率を指標として調整するアイテムを選択することについても、プレイヤーの理解度が関わってきます。特定のアイテムについて理解が進み、強すぎる(弱すぎる)ことが多くのプレイヤーに正しく理解されるとアイテム使用率に変化が出るでしょう。そこで調整が実施される訳ですが、上方修正して強くなったアイテムがあまり使われていない、または、下方修正して弱くなったアイテムが勘違されて使い続けられている、という場合もあります。そのような状況で開発陣が必要と判断した場合には、プレイヤーを誘導するような形で追加の上方修正(下方修正)が実施されているのではないでしょうか。

以上のように、開発陣が採用しているバランス調整の手法は、プレイヤーの理解度を観察しながら調整し、時には積極的にプレイヤーを誘導しつつ、プレイヤーの理解度が上がってクラス比率やアイテム使用率が適正値から外れたら再び調整する、という流れなのだと思います。

まとめ

BPBにおけるバランス調整の手法は、適切なバランスに最短で向かうのではなく、プレイヤーの現在の理解度に合わせて回り道もしつつバランスを整えていく手法だと言えます。

こうした姿勢はバランス調整だけに留まりません。BPBでは、最近のアップデートでも「体力減少のエフェクト追加」や「ホーム画面で落下するアイテムにカーソルでタッチできる演出」など、ゲーム性とは直接関係のないプレイ体験の改善を続けています。開発陣は単なる数値の辻褄合わせにとどまらず、ゲームの完成度とプレイヤーの満足度の両方を重視してアップデートを進めていることが今回の考察からもうかがえます。
筆者自身はグランドマスターに到達しているため、調整のテンポや回り道に対して気になる部分もあります。しかし、グランドマスター以上のごく少数のプレイヤー向けに最適化してボリューム層のダイヤ付近のバランスが崩れたり、理解が追い付かないまま環境が変化してプレイを見失ったりするリスクを考えると、あえて回り道もしつつプレイ体験を維持するバランス調整には合理性があると感じます。

読者の皆様はこのバランス調整の手法をどう感じられたでしょうか。

最後に、配信のもうひとつの目的であったSpelkollektivetの資金調達の話にも触れておきます。
冒頭でも述べたとおり、Spelkollektivetはスウェーデンにあるインディーゲーム開発者向けのコリビング(共同生活スペース)であり、開発陣のDoro氏とMario氏も拠点として利用しています。現在、この活動拠点を維持・購入するための資金調達が行われています。
公式サイトによると、現在の進捗状況は以下の通りです。


目標金額: 225万スウェーデン・クローナ(約3,560万円)
支援金額: 約140万スウェーデン・クローナ(約2,220万円)

BPBの開発環境や、広くインディーゲーム開発を支援したい方はチェックしてみてください。

Spelkollektivetの公式ページはこちら(Youtube配信の概要欄にもリンクがあります)

Spelkollektivet: The Home for Game Developers
A co-living space for game developers who want to live, work and create alongside like-minded people from around the wor…
タイトルとURLをコピーしました